こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんは金沢美術工芸大学(英語名 Kanazawa College of Art)という大学をご存知ですか。1946年、戦後の混乱のなかで金沢市民の熱意によって創立された、石川県金沢市の公立の美術大学です。美術科(日本画・油画・彫刻・芸術学)、デザイン科(ホリスティックデザイン・インダストリアルデザイン)、工芸科(陶磁・漆木工・金工・染織)の3学科を、ひとつのキャンパスで学べます。
本記事ではそんな金沢美術工芸大学について、基本情報、沿革、学部・大学院の構成、学費、入試の方式、キャンパスと美術工芸研究所、世界大学ランキングでの位置づけ、卒業後の進路まで、公式サイト(kanazawa-bidai.ac.jp)と公式の募集要項などで確認できた情報をもとにご紹介します。学費や入試の内容は年度ごとに変わりますので、年度を明記しながら整理していきます。それでは早速いってみましょう。
コンテンツ
Toggle金沢美術工芸大学って?
基本情報
| 正式名称 | 金沢美術工芸大学(英語名 Kanazawa College of Art) |
|---|---|
| 創立 | 1946年。金澤美術工藝專門學校として設立されました |
| 大学設立 | 1955年。4年制の金沢美術工芸大学として設立されました |
| 所在地 | 〒920-8656 石川県金沢市小立野2-40-1(2023年に現在の校舎へ移転) |
| 設置者 | 公立大学法人金沢美術工芸大学(2010年に法人へ移行) |
| 学長 | 山村慎哉(漆芸家。公式サイトでは学長(理事長)と記載) |
| 学生数 | 729名(美術工芸学部634名・大学院美術工芸研究科95名。2026年4月1日現在) |
| 入学定員 | 学部620名(各学年155名)、大学院修士課程82名(各学年41名)、博士後期課程21名(各学年7名) |
| 教員数 | 57名(日本画5、油画7、彫刻5、芸術学5、ホリスティックデザイン10、インダストリアルデザイン5、工芸12、一般教育等8) |
| 大学憲章の言葉 | 「芸術が社会に果たす役割を自ら探し行動する人材」を育成し、「知と創造の拠点」を目指す |
公式サイトの大学憲章は、創立の経緯を「戦後の混乱と虚脱のなか、学問を好み、伝統を愛し、美の創造を通じて人類の平和に貢献することを希求する金沢市民の熱意により、工芸美術の継承発展と、地域の文化と産業の振興を目指して創立された」と記しています。活動指針の第一には、「地域の文化資源を活用し、『手で考え、心でつくる』をモットーに創造力を高め」ることが掲げられています。
学長の山村慎哉は漆芸家です。公式サイトの学長メッセージでは、芸術の役割を、完成した形を示すことだけではなく、言葉にならない違和感に輪郭を与え、社会の課題に新たな道筋を示す営みだと述べています。また、身体を動かし、素材に触れ、対話や試行錯誤を重ねる「体感」を重視する姿勢も示されています。
入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)では、求める学生像として、デッサンなどの実技能力に加えて高等学校までの各教科・科目をできる限りしっかり習得しておくことを挙げています。入学後は制作課題のプレゼンテーションやレポートなど、言語による表現が求められるため、一般選抜ではすべての専攻で「国語」と「外国語」を必須としている、という説明です。
創立から80年、金沢美術工芸大学の歩み
金沢美術工芸大学の歴史は、1946年に始まります。公式サイトの沿革によれば、同年、下本多町三番丁(現在の出羽町)に金澤美術工藝專門學校が設立されました。美術・陶磁・漆工・金工の4科、合計120人という小さな規模でのスタートでした。
1950年に金澤美術工藝短期大學が設立され、1955年に4年制の金沢美術工芸大学が設立されます。当初は美術学科40人、産業美術学科60人の計100人でした。1965年には美術学科の定員を1学年40人から55人に増やし、商業美術と工業意匠をそれぞれ商業デザイン専攻、工業デザイン専攻に改組しています。同年には産業美術学科に工芸・繊維デザイン専攻(1学年15人)も新設されました。
1970年代には、研究と教育の基盤が整っていきます。1972年に美術工芸研究所が設置され、小立野5丁目11番1号の新校舎へ移転しました(敷地57,242.88平方メートル)。1979年には大学院修士課程(絵画・彫刻専攻、産業デザイン専攻)が、1986年には美術学科に芸術学専攻(1学年10人)が設置されています。1990年には大学院修士課程にも芸術学専攻が置かれました。

1996年の学科再編では、現在につながる3学科体制が発足しました。美術科(日本画・油画・彫刻・芸術学、計65人)、デザイン科(視覚・製品・環境の3専攻、計60人)、工芸科(20人)です。翌1997年には大学院博士後期課程(美術工芸専攻)が設置され、2000年には大学院修士課程が絵画・彫刻・芸術学・工芸・デザインの5専攻に再編されました。
2010年には公立大学法人金沢美術工芸大学に移行しています。2014年に柳宗理記念デザイン研究所が開設され、2016年には社会連携センターやキャリア支援室などが整えられました。
そして2023年、大きな節目を迎えます。公式サイトの沿革によれば、入学定員の一部変更とデザイン科の改編を行い、美術科(65人)、デザイン科(ホリスティックデザイン・インダストリアルデザイン、計60人)、工芸科(30人)の教育課程へ移行しました。大学院修士課程では、絵画専攻に映像コースが設けられています。同年、小立野2丁目40番1号の新校舎へ移転しました(敷地47,212.87平方メートル、建物37,357.65平方メートル)。あわせて共通工房も設置されています。2024年には社会連携センターを発展的に解消して社会共創センターを設置し、市民講座「KANABI OPEN STUDIO」を開設しました。
| 年 | できごと(公式サイト「沿革」より) |
|---|---|
| 1946年 | 金澤美術工藝專門學校を設立 |
| 1950年 | 金澤美術工藝短期大學を設立 |
| 1955年 | 4年制の金沢美術工芸大学を設立 |
| 1972年 | 美術工芸研究所を設置。小立野5丁目の新校舎へ移転 |
| 1979年 | 大学院修士課程を設置 |
| 1996年 | 学科再編により美術科・デザイン科・工芸科が発足 |
| 1997年 | 大学院博士後期課程(美術工芸専攻)を設置 |
| 2010年 | 公立大学法人金沢美術工芸大学に移行 |
| 2014年 | 柳宗理記念デザイン研究所を開設 |
| 2023年 | デザイン科を改編し、小立野2丁目の新校舎へ移転。共通工房を設置 |

美術工芸学部3学科、何をどう学べるのか
金沢美術工芸大学の学部は、美術工芸学部の1学部です。公式サイトの「学部・大学院」ページでは、次の3学科(美術科4専攻・デザイン科2専攻・工芸科)が紹介されています(一般教育等・基礎科目は全学科共通です)。卒業すると学士(芸術)の学位が授与されます。
| 学科・専攻 | 入学定員 | 内容(公式サイトより) |
|---|---|---|
| 美術科 日本画専攻 | 15名 | 日本画を学ぶ専攻。卒業後は公募団体の作家、大学教員、学芸員などに進む例が公式サイトで紹介されています |
| 美術科 油画専攻 | 25名 | 油画を学ぶ専攻。海外研修旅行が予定されています |
| 美術科 彫刻専攻 | 15名 | 彫刻の制作を学ぶ専攻 |
| 美術科 芸術学専攻 | 10名 | 美学・美術史・工芸論を中心とする視覚文化研究と、領域横断的な制作・キュレーションの実践を伴う現代美術研究に取り組む専攻(英語名 SCAPe) |
| デザイン科 ホリスティックデザイン専攻 | 40名 | コミュニケーションから空間まで、広告・パッケージ・書籍・映像・ゲーム・プロダクト・ファッション・ブランディング・空間・景観・建築の11分野を横断して学びます |
| デザイン科 インダストリアルデザイン専攻 | 20名 | インダストリアルデザインを学ぶ専攻。海外研修旅行が予定されています |
| 工芸科 | 30名 | 陶磁・漆木工・金工・染織の4コースから選んで学びます |
表の入学定員は、公式サイトの募集要項に記載されている学校推薦型選抜を含む数字で、3学科の合計は155名、4学年で620名です。

美術科:4つの専攻で「つくる」と「考える」を学ぶ
美術科は、日本画・油画・彫刻・芸術学の4専攻で構成されます。アドミッション・ポリシーによれば、美術科では「高度で創造的な技術の修得とその応用をはかり、古典から現代までをつらぬく美術理論を学びます」。将来、作家や研究者をはじめ、これからの美術分野で活躍し、貢献する人材の育成を目指すとされています。
芸術学専攻は、制作ではなく研究とキュレーションを軸にした専攻です。公式サイトは英語名を「The Study of Contemporary Art Practice and Visual Culture(SCAPe)」としており、研究だけでなく作品制作や展示企画といった実践を含む点が特徴です。一般選抜の試験科目に、構想型デッサンとポートフォリオが課されることからも、その性格が読み取れます(詳しくは後述します)。
デザイン科:2023年に「ホリスティック」と「インダストリアル」の2専攻へ
デザイン科は、2023年の改編で現在の2専攻になりました。それ以前のデザイン科は視覚・製品・環境の3専攻でした(沿革より)。ホリスティックデザイン専攻のページによれば、1年次は色彩・素材・形態・情報・発想・描写といった基礎、2年次は複数のデザイン分野での選択演習とデザインプロセス・デザイン論、3年次は分野を横断または深掘りする選択科目、4年次は各自のテーマを定める卒業制作という流れです。学外活動(産学連携事業)として、湖池屋プライドポテトJAPAN、無印良品・九州大学連携プロジェクト、金沢村田製作所のイルミネーションなどが紹介されています。
なお、改編の趣旨そのものは公式サイトのこのページには書かれていないため、本記事では触れません。
工芸科:九谷焼・加賀友禅の産地で学ぶ
工芸科は1996年の学科再編で発足しました(発足時の定員は20名、2023年からの教育課程では30名です)。公式サイトによれば、4年間の前半は伝統技法や素材の知識・技術の習得に重点を置き、後半は「表現力と創造性」を軸に専門課程での研究に取り組みます。目標は、世界に通ずる工芸作家、デザイナー、研究者、指導者の育成です。
| 年次 | 公式サイトの区分 | 内容の例 |
|---|---|---|
| 1年次 | 基礎と体験 | 工芸の基礎を学びながら、陶磁・漆木工・金工・染織の各コースを体験します |
| 2年次 | 素材と技術 | 専門分野の知識と技術を養います。古美術演習や地域工芸演習I(社会研究)などがあります |
| 3年次 | 自己発見 | 表現力と創造力を深めます。複合素材演習や地域工芸演習II(産地研修)などがあります |
| 4年次 | 創造性 | 伝統に学びながら、新しい工芸を開いていきます |
コース別の特色として、陶磁は九谷焼の土壌を踏まえた技術と、陶磁器による新しいものづくりを重視します。金工は鋳金・鍛金・彫金の技法をマンツーマン教育で学びます。染織は、加賀友禅の産地であり合成繊維の製造・加工でも質・量ともにトップレベルの産地という地域性を生かし、伝統から先端技術までを学ぶとされています。地域の産地や文化と結びついた学びは、この大学ならではの特徴です。
大学院美術工芸研究科で、さらに深く学ぶ
大学院は美術工芸研究科の1研究科で、修士課程と博士後期課程があります。修士課程は1979年の設置(当時は絵画・彫刻専攻、産業デザイン専攻)で、2000年に現在につながる5専攻へ再編されました。入学定員は修士課程82名(各学年41名)、博士後期課程21名(各学年7名)です。
| 専攻 | コース・分野(公式サイトより) |
|---|---|
| 絵画専攻 | 日本画コース、油画コース、映像コース |
| 彫刻専攻 | 彫刻コース(塑像、木彫、石彫、金属彫刻)、環境彫刻コース |
| 工芸専攻 | 陶磁、漆・木工、金工、染織の4コース |
| デザイン専攻 | 視覚デザイン、製品デザイン、環境デザインの3コース |
| 芸術学専攻 | 視覚文化研究、現代美術研究の2分野 |
博士後期課程は1997年に設置され、美術工芸専攻の1専攻です。公式サイトによれば、博士論文の研究領域は美術、工芸、環境造形、芸術学に分かれ、設置以来73名の芸術博士を輩出しているとされています。年2回の公開の研究発表があり、「地域美術演習」「造形総合研究」といった実技と理論を組み合わせた科目が置かれています。
学費(2026年10月時点の公式掲載額)
金沢美術工芸大学の公式サイトの学費ページは、年度の表記がなく、「入学金・授業料等は改定される場合があります」と注記しています。ここでは2026年10月時点で公式サイトに掲載されている金額を紹介します。学部の学費は次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 納入時期 |
|---|---|---|
| 入学金(金沢市内居住者) | 282,000円 | 入学手続時 |
| 入学金(上記以外) | 423,000円 | 入学手続時 |
| 授業料(年間) | 535,800円 | 前期267,900円・後期267,900円 |
| 成美会費(後援会費) | 60,000円 | 入学手続後 |
| 学生自治会費 | 10,000円 | 入学手続後 |
| 研修旅行費 | 100,000〜300,000円 | 入学手続後(学科・専攻により異なる) |
| 学外研修費、用具・材料費等 | 金額の記載なし | 学修実績分が必要 |
公立大学の特徴として、市内居住者と市外居住者で差があるのは入学金のみです(授業料は同額)。入学金・授業料・成美会費・学生自治会費の確定分を合計すると、初年度は金沢市内居住者が887,800円、市外居住者が1,028,800円になります。研修旅行費、学外研修費、用具・材料費は含みません。
研修旅行費は、2027年度(令和9年度)一般選抜の募集要項によると、美術科日本画が100,000円、油画が250,000円、彫刻が150,000円、芸術学が160,000円、デザイン科インダストリアルデザイン専攻が300,000円、工芸科が180,000円で、ホリスティックデザイン専攻は徴収されません。油画専攻とインダストリアルデザイン専攻では海外研修旅行が予定されています。余剰金が発生した場合は返金されるとも書かれています。
4年間の大学への納付額を編集部で計算すると、授業料535,800円×4年に、入学金・成美会費・学生自治会費を加えて、市内居住者で2,495,200円、市外居住者で2,636,200円です(授業料の改定がないと仮定した計算で、研修旅行費・材料費・生活費は含みません)。
大学院の学費は次のとおりです。
| 項目 | 修士課程 | 博士後期課程 |
|---|---|---|
| 入学金(市内居住者・本学卒業者等) | 282,000円(市内居住者および本学卒業者) | 282,000円(市内居住者、本学学部卒業者および本学修士課程修了生) |
| 入学金(上記以外) | 423,000円 | 423,000円 |
| 授業料(年間) | 535,800円 | 535,800円 |
| 成美会費(後援会費) | 30,000円 | 45,000円 |
| 学生自治会費 | 5,000円 | 記載なし |
入試の方式(2027年度入試)
金沢美術工芸大学の学部入試は、一般選抜と学校推薦型選抜の2つです。公式サイトの入試情報には、令和9年度(2027年度)入試の学生募集要項が公開されています。入試の内容は毎年見直されますので、出願の際は必ず最新の募集要項をご確認ください。
一般選抜:共通テスト+実技の二段構え
一般選抜は、公立大学の中期日程で実施されます。第1段階は大学入学共通テスト、第2段階は大学が課す試験(実技試験、面接など)で、入学者は両方の得点を合計した総合得点の上位から決まります。共通テストは、令和9年度の成績のみが利用でき、過年度の成績は使えません。
共通テストは3教科3科目が必要です。「国語」と「外国語」が必修で、これに地理歴史・公民・数学・理科・情報から1教科を選択します。外国語で英語を選ぶ場合はリスニングの受験が必要です(リスニング免除者を除く)。配点は、専攻によって次のように設定されています。
| 学科・専攻 | 共通テスト | 大学の試験(配点) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 美術科 日本画 | 600点 | 実技試験Ⅰ700点・実技試験Ⅱ700点 | 2000点 |
| 美術科 油画 | 600点 | 実技試験700点・作品提出と面接700点 | 2000点 |
| 美術科 彫刻 | 600点 | 実技試験Ⅰ700点・実技試験Ⅱ700点(塑造500点・スケッチ200点) | 2000点 |
| 美術科 芸術学 | 900点 | 構想型デッサン600点・ポートフォリオ500点 | 2000点 |
| デザイン科 ホリスティックデザイン | 600点 | 実技試験1400点(デッサン400点・色彩構成500点・立体構成500点) | 2000点 |
| デザイン科 インダストリアルデザイン | 600点 | 実技試験1400点(鉛筆デッサン600点・色彩表現400点・立体表現400点) | 2000点 |
| 工芸科 | 600点 | 実技試験1400点(鉛筆デッサン600点・立体表現400点・色彩表現400点) | 2000点 |
全専攻の合計が2000点で、大学の試験が1400点(芸術学は1100点)を占めます。編集部が計算すると、日本画・油画・彫刻・デザイン科・工芸科では大学の試験が合計の7割(共通テストは3割)、芸術学専攻では大学の試験が55%(共通テストは45%)です。日本画専攻と彫刻専攻は二段階の選抜で、実技試験Ⅰに合格した人だけが実技試験Ⅱに進みます。油画専攻と彫刻専攻では出願時に木炭紙または画用紙を選びます。油画専攻ではこのほか作品提出(油彩またはアクリル)と面接も課されます。
採点・評価基準も募集要項に公開されています。たとえばホリスティックデザイン専攻の色彩構成は、「提示されたテーマに対して理解し、独創的な発想をする力。構成力と色彩感覚を表現する力」を見るとされています。芸術学専攻のポートフォリオは「発想力、表現力及び展開力」と、それを適切にまとめる編集力・文章力が評価の対象です。
令和9年度の一般選抜の募集人員は、日本画15名、油画25名、彫刻15名、芸術学7名、ホリスティックデザイン40名、インダストリアルデザイン18名、工芸科24名の合計144名です。入学考査料(受験料)は17,000円で、出願はWeb出願と書類の郵送で行います。同じ日程の他大学への出願はできず、学科・専攻間の併願もできません。
学校推薦型選抜
学校推薦型選抜を実施するのは、美術科芸術学専攻、デザイン科インダストリアルデザイン専攻、工芸科の3つです。公式サイトによれば、第1次選考は提出物による審査、第2次選考はポートフォリオや面接、実技試験等で行われます。募集人員などの詳細は、令和9年度の学校推薦型選抜の学生募集要項(2026年7月発行)に記載されています。
2026年度(令和8年度)一般選抜の結果
公式サイトで公開されている令和8年度(2026年度)一般選抜の入試結果によれば、美術工芸学部3学科の合計で、募集人員144名に対して志願者は826名、合格者は158名でした(合格者には追加合格者を含みます)。公式の結果表では、全体の倍率欄に5.7と示されています(志願者数を募集人員で割った値に当たります)。
この数字は、一般選抜のみを対象とした学部全体の合計です。専攻ごとに倍率は異なり、大学ごとに集計の対象範囲や倍率の出し方も違います。他大学の倍率と単純に比較することはできませんので、あくまでこの大学の入試の規模感をつかむ目安としてご覧ください。
キャンパスと施設
金沢美術工芸大学は、2023年に石川県金沢市小立野2丁目40番1号の新校舎へ移転しました。敷地面積は47,212.87平方メートル、建物面積の合計は37,357.65平方メートルです。公式サイトのキャンパス紹介によれば、全館が鉄筋コンクリート造で(藍小屋棟は木造、駐輪場棟は鉄骨造)、4号館の延べ面積は17,649.99平方メートルと、施設の中で最も大きな建物です。
| 館 | 主な施設(公式サイトより) |
|---|---|
| 1号館 | 学長室、事務局、保健室、アートコモンズラウンジ、一般教育等、芸術学、美術工芸研究所 |
| 2号館(美術館・図書館) | 図書館、アートギャラリー、平成の百工比照コレクション、レクチャーホール |
| 3号館 | 学生ラウンジ、売店、講義室 |
| 4号館 | 共通工房、日本画・油画・彫刻・芸術学・ホリスティックデザイン・インダストリアルデザイン・工芸の各専攻 |
| 5号館 | ホリスティックデザイン、インダストリアルデザイン |
| 6号館 | 共通工房、油画 |
| 体育館 | アリーナ |
ひとつのキャンパスに、美術・デザイン・工芸のすべての専攻が集まっていることが、この大学の大きな特徴です。専攻が異なる学生どうしが同じ建物で制作しているため、領域を横断した交流が生まれやすい環境と言えます。新校舎の設計者はキャンパス紹介のページには記載がないため、本記事では触れません。
美術工芸研究所:所蔵品8,800点と「平成の百工比照」
美術工芸研究所は1972年に設置された附置機関で、美術・工芸・デザインの調査研究、芸術資料の収集・保存・活用、展覧会の運営などを行っています。公式サイトによれば、絵画・彫刻・工芸・デザインなどの所蔵品は8,800点で、学術研究目的であれば学内外を問わず閲覧できます。
2023年の校舎移転にあわせて、「アートギャラリー」と「平成の百工比照 展示・閲覧コーナー」が開設されました。アートギャラリーは年間4本の展覧会を開催し、入場は無料です。「平成の百工比照」では、全国の工芸資料を陶磁・漆工・金工・染織の分野ごとに手に取って見ることができ、工芸技術の記録映像の視聴や、データベースでの資料検索もできます。大学が工芸の資料を収集し公開しているという点で、工芸科を持つこの大学らしい取り組みです。
附置の柳宗理記念デザイン研究所は、工業デザイナー柳宗理(1915〜2011)のデザイン思想の研究を行う機関で、2014年に開設されました。
国際交流
公式サイトでは、6つの大学・学院との交流協定が紹介されています。ゲント王立美術アカデミー(ベルギー)とナンシー国立高等美術学校(フランス)とは2008年度から学生の短期派遣、ヴァランド芸術学院(スウェーデン)とは1990年から交換留学協定に基づく学生の相互派遣が行われています。このほか、清華大学美術学院(中国)、ニューヨーク州立大学バッファロー校(アメリカ)、大連工業大学(中国)との交流もあります。また、ナンシー市役所でのインターンシップと姉妹都市交換留学生制度が紹介されています。
世界大学ランキングでの位置づけ
QS(クアクアレリ・シモンズ)社が発表する「QS世界大学ランキング アート&デザイン部門」は、美術・デザイン分野の国際的なランキングです。結論からお伝えすると、2026年版のこの部門に、金沢美術工芸大学は掲載されていません。編集部で公式サイトを確認したところ、日本の掲載校は東京大学・千葉大学・筑波大学・京都大学・武蔵野大学(武蔵野美術大学とは別の大学です)・東京藝術大学・慶應義塾大学・京都工芸繊維大学・九州大学・早稲田大学の10校でした。
これは教育の質が低いことを意味しません。このランキングの配点は、学術評判(世界中の研究者へのアンケート)が90%、雇用者評判(企業の採用担当者へのアンケート)が10%で、順位の大部分は「世界の研究者がその大学の研究をどう見ているか」で決まります。小規模な公立の美術大学が国際的な知名度の指標で不利になるのは、仕組みから見て自然なことです。算出方法の詳しい解説と各大学の順位は、アート&デザイン部門QS世界大学ランキングの解説記事をご覧ください。
卒業後の進路
金沢美術工芸大学の公式サイトでは、令和7年度(2025年度)の卒業生・修了生の進路状況が、令和8年(2026年)3月末現在の数字として公開されています。
| 区分 | 卒業生・修了生 | 就職希望者 | 就職者 | 就職決定率 |
|---|---|---|---|---|
| 学部 | 158名 | 92名 | 89名 | 96.7% |
| 大学院(修士課程) | 45名 | 27名 | 24名 | 88.9% |
就職決定率は、就職希望者に対する就職者の割合です。分母は卒業生全体ではなく「就職希望者」ですので、他大学の数字と並べるときは定義をそろえて見る必要があります。作家を志す人や大学院へ進む人は、就職希望者には含まれません。
公式サイトの進路ページには、専攻ごとの主な就職先・進学先が紹介されています。
| 専攻 | 主な進路の例(公式サイトより) |
|---|---|
| 日本画 | 日展などの公募団体の作家、大学教員、学芸員(石川県立美術館、福井県立美術館、名古屋市美術館など)、文化財保護関係機関 |
| 油画 | 任天堂、カプコン、京都アニメーション、カイカイキキ、Cygames、TBSアクトなどの企業、画家、中学・高校教員。進学先は本学大学院と東京藝術大学大学院 |
| 彫刻 | 金沢21世紀美術館、任天堂、本田技術研究所、日産自動車、セガ、劇団俳優座舞台美術、中学・高校教員 |
| 芸術学 | 石川県立美術館、東京国立博物館、横浜美術館、国立工芸館、ポーラ美術館、豊田市美術館などの美術館・博物館 |
| 工芸 | 本田技研工業、ヤマハ発動機、ソニーPCL、ワコール、TASAKI、造幣局、サンゲツ、石川県工業試験場、九谷焼技術研修所など |
| ホリスティックデザイン | 電通、博報堂、トヨタ自動車、任天堂、ソニー、NHK、パナソニック、コクヨなど |
| インダストリアルデザイン | トヨタ自動車、任天堂、キヤノン、ソニー、ヤマハ、マツダ、デンソー、パナソニックなど |
進路ページによれば、美術科・工芸科では教員免許状を取得する学生が約4割、学芸員資格を取得する学生が約2割いるとされています。卒業後は、作家、デザイナー、教員、学芸員、企業のクリエイターと、専攻によって進路の幅が大きく異なることがわかります。
まとめ
いかがだったでしょうか。金沢美術工芸大学について見てきました。要点は次の7つです。
- 1946年に金澤美術工藝專門學校として創立され、1955年に4年制の大学になりました。2010年に公立大学法人へ移行し、2023年に現在の校舎へ移転しています
- 美術工芸学部は3学科(美術科4専攻・デザイン科2専攻・工芸科)で、入学定員は学部合計155名(各学年)です。学生数は学部634名・大学院95名の計729名(2026年4月1日現在)です
- 授業料は年間535,800円で、市内居住者と市外居住者で差があるのは入学金(282,000円と423,000円)のみです。初年度の確定分合計は887,800円(市内)、1,028,800円(市外)です
- 一般選抜は共通テスト(3教科3科目)と実技などを合算します。全専攻の合計は2000点で、大学の試験の比重が高い設計です
- 2026年度一般選抜は、募集144名に対して志願者826名、合格者158名(追加合格者を含む)でした
- QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版には掲載されていません。この部門は学術評判90%・雇用者評判10%で決まり、掲載の有無は教育の質を示すものではありません
- 2025年度の学部卒業生の就職決定率は96.7%(就職希望者92名のうち89名)。分母は希望者です
学費や入試の内容は年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
Euphoric " " の視点
金沢美術工芸大学の入試で目を引くのは、配点の設計です。公式の募集要項では、全専攻の合計が2000点で、大学が課す試験は日本画・油画・彫刻・デザイン科・工芸科で1400点です。共通テストの600点より実技の比重のほうが明確に高く、それでも「国語」「外国語」を必修にしています。この大学は、描く力と言葉で考える力の両方を見たい、と配点で述べているのだと私たちは読みます。
もうひとつは、規模の小ささです。学部の入学定員は155名で、公式の組織ページに載っている学生数729名と教員数57名を単純に割ると、教員1人あたり約12.8人になります(時点の異なる数字を割った編集部の概算です)。大きな総合大学や大規模な美術大学とは、教室の空気がかなり違うはずです。大規模校と小規模校のどちらが優れているかではなく、自分にどちらが合うかの問題だと考えます。
美術工芸研究所の取り組みも見逃せません。8,800点の所蔵品と、全国の工芸資料を手に取れる「平成の百工比照」を、大学が自前で持っていることは、工芸を教える場としては大きな資産です。学びの場に本物の資料があるという事実は、パンフレットの言葉よりずっと雄弁です。
進学先を選ぶとき、就職決定率や倍率だけを見ると、かえって違いが見えにくくなります。その大学が何を教え、何を集め、何に場所と予算を割いているか。そこに、大学が何を大事にしているかが表れます。金沢美術工芸大学の場合、それは工芸と、地域の産地とのつながりだと、公式の情報からは読み取れます。
出願に向けてポートフォリオを用意する段階でお悩みの方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。
もっと知るには
本記事の情報は、金沢美術工芸大学の公式サイト(kanazawa-bidai.ac.jp)をもとに確認しています。学費・入試の内容は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。
| 内容 | 公式ページ |
|---|---|
| 沿革 | 金沢美術工芸大学「沿革」 |
| 大学憲章・活動指針 | 金沢美術工芸大学「大学憲章・活動指針・教育方針」 |
| 学長メッセージ | 金沢美術工芸大学「学長メッセージ」 |
| 学部・大学院の構成 | 金沢美術工芸大学「学部・大学院」 |
| 学費 | 金沢美術工芸大学「授業料・奨学金」 |
| 入試情報 | 金沢美術工芸大学「入試情報」/学部入試 一般選抜/学校推薦型選抜 |
| キャンパス・研究所 | 金沢美術工芸大学「キャンパス紹介」/美術工芸研究所 |
| 国際交流 | 金沢美術工芸大学「国際交流・留学」 |
| 進路・就職 | 金沢美術工芸大学「進路・就職」 |
| 組織・学生数 | 金沢美術工芸大学「大学組織」 |
海外の美術系大学と比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。国内の美術大学の違いが気になる方は国内美大の比較記事、国内の他の芸術・美術大学については国内の芸術・美術大学のアート&デザイン学部/専攻をまとめた記事もご用意しています。






