全15回のうち 第8回
連載「美術館の英語を読める人になる」
-ism / -ist「〜ism」の読み方
美術館の解説文には、Impressionism、Neoclassical、a leading figure of … のように、美術運動の名前と、その運動に作家を結び付ける言い方がよく出てきます。この記事は、連載「美術館の英語を読める人になる」の第8回です。今回は「〜ism」と「〜ist」の読み分けを中心に、美術運動の英語を、印象派の画家ピサロの1枚で読み解きます。
連載の全体像と学ぶ順番は、アート英語カリキュラム 目次にまとめています。
読了目安 約15分(練習問題を含む)使える型 3つ練習問題 3問
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この回を読むと、〜ism/〜ist/movement/school を読み分け、作品を美術運動と結び付けて英語で説明できるようになります。
この回で扱う言葉
Impressionism
名詞(数えない)
意味印象派(運動・考え方そのもの)、印象主義
the history of Impressionism
an Impressionist
名詞(数える)
意味印象派の画家(人)
Pissarro was an Impressionist.
the Impressionists
名詞(複数)
意味印象派の画家たち(グループ)
the Impressionists’ exhibitions
Impressionist
形容詞
意味印象派の
an Impressionist painting
日本語の「印象派」は、運動にも、画家にも、作品にも使える便利な言葉です。英語では運動は -ism、人は -ist と語尾で分け、-ist はそのまま形容詞にもなります。
今日の1枚

DETAIL
DETAILCamille Pissarro (French, 1830–1903)
The Garden of the Tuileries on a Winter Afternoon, 1899
Oil on canvas
29 × 36 1/4 in. (73.7 × 92.1 cm)
The Metropolitan Museum of Art, Gift of Katrin S. Vietor, in loving memory of Ernest G. Vietor, 1966 (66.36)
- 作品名
- 《冬の午後のチュイルリー公園》
- 作家
- カミーユ・ピサロ(フランス、1830–1903)
- 制作年
- 1899年
- 素材・技法
- 油彩、カンヴァス
- サイズ
- 73.7 × 92.1 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館(ニューヨーク)ヨーロッパ絵画部門
- クレジット
- Gift of Katrin S. Vietor, in loving memory of Ernest G. Vietor, 1966(66.36)
- 画像
- The Met Open Access(CC0)/作品ページ(The Met)
ピサロはカリブ海のセント・トーマス島(当時はデンマーク領)で生まれ、フランスで活動した画家です。ピサロは生涯デンマーク国籍だったとされますが、メトロポリタン美術館のラベルでは French と表記されています。ラベルの国籍欄は、法律上の国籍ではなく、作家が主に活動した国や美術の文脈を示していることが多い欄です。生涯と代表作は、カミーユ・ピサロの解説記事で詳しく紹介しています。
美術館の解説文で読む
美術館のウォールテキストの書き方にならって書いた、Euphoric " " によるオリジナルの英文です。運動の名前が、どの品詞で出てくるかに注目して読んでください。
Camille Pissarro was the only artist to show work in all eight Impressionist exhibitions, held in Paris between 1874 and 1886. In the mid-1880s he adopted the dot technique of Neo-Impressionism2, then returned to a looser Impressionist manner1. This view, painted in 1899, belongs to that late phase. Working from an apartment on the rue de Rivoli, opposite the Tuileries Gardens, he looked down on paths, lawns, and bare trees on a gray winter afternoon. Short, broken brushstrokes4 of green, pink, and gray build the scene, and the twin spires of Sainte-Clotilde rise in the background. The high viewpoint and the scattered crowds reflect the movement’s3 long interest in modern city life5.
下線と番号は、このあとの「読み解き」1〜5に対応しています。
全訳を読む
訳:カミーユ・ピサロは、1874年から1886年にかけてパリで開かれた8回の印象派展すべてに作品を出品した、ただ一人の画家です。1880年代半ばには新印象派の点の技法を取り入れ、その後、よりゆるやかな印象派の手法に戻りました。1899年に描かれたこの眺めは、その晩年の時期に属します。チュイルリー公園の向かい、リヴォリ通りのアパートで制作したピサロは、灰色の冬の午後の小道、芝生、葉の落ちた木々を見下ろしました。緑・ピンク・灰色の短く途切れた筆跡が景色を組み立て、背景にはサント=クロティルド聖堂の2本の尖塔がそびえています。高い視点と散らばる人の群れは、この運動が長く持ち続けた、近代の都市生活への関心を映しています。
読み解き:なぜこの言い方なのか
1文目の all eight Impressionist exhibitions は「8回の印象派展」。ここの Impressionist は人ではなく、exhibitions を修飾する形容詞です。2文目の a looser Impressionist manner(よりゆるやかな印象派の手法)も同じ形容詞の用法です。
日本語話者がつまずきやすいのは、「印象派の絵」を -ism で言ってしまう誤りです。英語では -ism の名詞を形容詞のように前に置く言い方はあまりせず、-ist の形容詞を使います。
運動の名前は大文字で始めるのが基本です(Impressionism, Realism)。小文字の realism は「写実性・現実主義」という一般的な意味になり、19世紀フランスの美術運動を指すときの Realism とは区別されます。
なお「印象派」という名前は、1874年の最初の展覧会に出品されたモネの《印象・日の出》を見た批評家ルイ・ルロワが、新聞の批評で揶揄して使った言葉が定着したものとされています(印象派の解説記事)。もともと悪口だった呼び名が、運動の正式な名前になったわけです。
2文目の Neo-Impressionism(新印象派)は、第1回のスーラが中心となって始めた運動です。Neo- は「新しい」を意味する接頭辞で、Neo-Impressionism ではハイフンを入れて書きます(Neoclassicism のように、ハイフンなしで続けて書くのが一般的な語もあります)。印象派の色彩の研究を受け継ぎながら、色を小さな点に分けて並べる、より体系的な方法をとりました。第1回で読んだスーラの油彩画《サーカスの客寄せ》は、まさにこの運動の代表的な作品です(素描《アマン=ジャン》は、運動が始まる前の1882〜83年の作です)。
似た形の Post-Impressionism(ポスト印象派・後期印象派)は、Post-(〜の後の)が付いた語で、印象派の後に現れた、さまざまな方向の画家たちをまとめて呼ぶ言葉です。
Neo-
新〜、〜の再生
ニュアンス前のものを受け継ぎ、作り直す
Neo-Impressionism, Neoclassicism
Post-
〜の後の
ニュアンス時代の後にあることを示す、まとめての呼び名
Post-Impressionism
解説文が adopted the dot technique of Neo-Impressionism, then returned to …(取り入れ、その後戻った)と書いているのは、ピサロが印象派の中心人物でありながら、一時期は若い世代の方法を試したという経緯を伝えるためです。Euphoric " " のピサロ記事でも紹介しているように、ピサロは1885年にスーラやシニャックと知り合い、周囲の不評をよそに点描に取り組みました。
最終文の the movement’s long interest の movement は「(美術)運動」。日本語では「印象派」「新古典派」のように「派」で訳されることが多い言葉ですが、英語では目的や考え方を共有する画家たちの動きを movement と呼びます。展覧会や声明で自ら行動した集団のほか、ロマン主義のように後の時代にまとめて呼ばれるようになったものも movement と言います。印象派の画家たちが自分たちで展覧会を組織したことは、まさに movement らしい行動です。
一方の school も「派」と訳されますが、使われ方が違います。
school は「学校」ではなく、同じ土地や師匠のもとで似た描き方をした画家たちのまとまりです。the Dutch school は「オランダ派(オランダの画家たち)」で、美術館の展示室名や作家欄にも使われます。
「〜ism」というラベルを貼るだけでは、作品を見たことにならない
解説文は「印象派の作品です」と言うだけで終わらず、Short, broken brushstrokes of green, pink, and gray build the scene(緑・ピンク・灰色の短く途切れた筆跡が景色を組み立てる)と、画面のどこが印象派らしいのかを具体的に書いています。brushstroke(筆跡)は第5回で、background(背景)は第4回で学んだ語です。
broken は「壊れた」ではなく、「(一続きではなく)途切れた・分かれた」。色を混ぜて滑らかにつなぐのではなく、短い筆跡を並べて置く描き方を表します。英語の解説文で broken color(筆触分割)、broken brushwork と出てきたら、印象派の典型的な手法を指していると考えてよいでしょう。
運動の名前は、ラベルのように一語で済ませることもできます。それでも解説文が見た目の特徴を書き添えるのは、「〜ism」というラベルを貼るだけでは、作品を見たことにならないからです。運動の名前と画面の観察をセットにする書き方は、自分で作品を説明するときにもそのまま使えます。
最終文は、作品と運動を reflect(〜を映し出す・反映する)で結んでいます。印象派の画家たちは、自分たちが生きる時代の都市や人々を主題にしました。高い窓から見下ろす視点と、公園に散らばる人の群れは、その関心を受け継いだものだと読めます。
作品と運動を結ぶ言い方には、強さの段階があります。
とくに in the Impressionist style は、運動に参加していない後の時代の画家の作品にも使えます。「運動のメンバーだった」のか「様式が似ている」のかを区別して読むと、解説文の主張の強さが正確にわかります。第1回や第7回の anticipates(予告する)も、運動の系譜を語るときの動詞です。前の世代の作品が後の運動を先取りするなら anticipates、後の作品が前の運動の関心を受け継ぐなら reflects、と時間の向きで使い分けます。
解説文によく出る運動を、年代順にまとめます。年代はおおよその目安で、地域や研究者によって幅があります。
Romanticismロマン主義
18世紀末〜19世紀半ばドラクロワ、フリードリヒ
Realism写実主義
19世紀半ば(フランス)クールベ
Impressionism印象派(印象主義)
1874〜1886年の印象派展が中心モネ、ルノワール、ドガ、ピサロ
バーの両端のぼかしは、年代がおおよその目安であることを表しています(印象派は印象派展の期間)。
形容詞形も確認しておきます。Neoclassicism → Neoclassical、Romanticism → Romantic、Realism → Realist、Impressionism → Impressionist。-ism から -ist になるものと、-al や -ic になるものがあるので、運動ごとに覚えておくと便利です。
最後に時制です。Pissarro was the only artist …、he adopted … は過去の出来事なので過去形。brushstrokes … build the scene、spires … rise in the background は画面に今見えていることなので現在形です。
使える型3つ
作家を運動に結び付ける、最も強い言い方です。of の後ろは運動名(-ism)か、the 〜 movement。
参加の程度をはっきりさせずに、関係の深さを言う形です。
見た目の特徴を言う形です。運動のメンバーだったかどうかは問いません。
練習問題
( )に入る語を選んでください。
- Monet was one of the most famous (Impressionism / Impressionists).
- This is an (Impressionism / Impressionist) landscape.
- The Barbizon (school / movement / period) was a group of painters who worked near the forest of Fontainebleau.
模範解答を見る
- Impressionists:one of the 〜 の後ろは人の複数形。
- Impressionist:landscape を修飾する形容詞は -ist。
- school:土地のつながりでまとめた画家たちの呼び名。the Barbizon school は決まった言い方です。
型1を使って、次の日本語を英語にしてください。
「スーラは新印象派の中心人物でした。」
模範解答を見る
Seurat was a leading figure of Neo-Impressionism.
of the Neo-Impressionist movement としても正解です。Neo- の後のハイフンを忘れないようにしてください。
好きな作品を1点選び、それがどの運動や様式と関係するかを、画面の特徴を1つ添えて英語で1〜2文書いてください。
解答例を見る
This landscape is painted in the Impressionist style. Short brushstrokes of blue and white build the water.
The artist was associated with the Realist movement. The painting shows farmworkers at life size.
答えは作品によって変わります。「運動・様式の名前」と「それを裏付ける画面の特徴」を1文ずつ書くと、ラベルを貼るだけの説明から一歩進みます。
前回の復習
第7回「壁の解説文の型」の言葉を使って答えてください。
ウォールテキストの4段構成を、順番どおりに言ってください。
答えを見る
つかみ → 文脈 → 観察 → 意義。今日の解説文でも、1文目(文脈:ピサロと印象派展)から入り、観察(筆跡・尖塔)を経て、最終文で意義(運動の関心)を述べています。この回の解説文は、つかみを省いて文脈から始めた形です。
「この絵は冬の公園を描いています」を、depict を使って英語で言ってください。
答えを見る
This painting depicts a park in winter.
主題を言う動詞は paint ではなく depict です。
型「Painted in 〔年〕, this 〜」を使って、今日の1枚の文脈の書き出しを英語で書いてください。
答えを見る
Painted in 1899, this canvas depicts the Tuileries Gardens on a winter afternoon.
次回予告と目次
第9回 作家のステートメントを読むartist statement
ゴール:作家自身の言葉(一人称の文章)の典型表現を読み取れるようになる。
画像:ジェームズ・マクニール・ホイッスラー《肌色と黒のアレンジメント:テオドール・デュレの肖像》1883年 The Metropolitan Museum of Art, Catharine Lorillard Wolfe Collection, Wolfe Fund, 1913(13.20)/Open Access(CC0)
全15回の一覧と、学んだ回のチェック表はアート英語カリキュラム 目次にあります。
全15回の目次を見る- カミーユ・ピサロとは|生涯と代表作をわかりやすく解説
- 印象派とは?特徴・歴史・代表的な画家をわかりやすく解説
- 【徹底解説】ジョルジュ・スーラとは?点描で光を組み立てた新印象派の創始者の人生と作品を解説!
- アートの英単語31語|「表現」・構図・美学は英語で?例文つき辞典単語を引きたいときに
- 美術の専門用語を英語で|明暗法・図像学・来歴など31語の辞典
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